時代の流れと雇用環境 2014年Employment situation
企業の人件費とコスト管理体制
2014年、経費削減の勢いそのままに大手企業を中心に、受付、総務、秘書なども業務をアウトソース(外注)している流れがあります。会社として一番コストがかかるのは「人件費」です。企業は「人件費をはじめとしたコストをいかに抑えて会社の利益を増やせるか」を、「取り扱っている製品・サービスをどうやって売り上げていくか」と同等に考えています。そしてITやロボット工学などが発達してきている現在、経費削減は顕著に現れています。ITやロボット等の機械における初期投資は金額的にはかなり大きいものもありますが、3年、5年、10年の中長期的スパンで考えると人件費よりもコストがかからないことが大半です。日本で派遣やアウトソースが大きく活用されているのは「コスト管理」の面が大きいといっても過言ではないでしょう。つまり端的に言えば経営状況や収益状況が悪ければ人件費を削減するということです。
しかし決して派遣が悪いという訳ではありません。新しい業界や職種に今までの経験を活かしてチャレンジできそこで経験を積めたり、状況に合わせてパートタイムで働けたりと雇用の柔軟性については非常に長けています。また、企業も派遣に頼らざるを得ない状況にもなっています。何か新しい事や新しい異動者がきた場合、それに付随するサポート業務が発生した際、内部調整できないケースが多いです。理由は人を異動させればそこに空きができ、補えば空きが出るといったことが発生します。さらには即戦力が必要とされ、社内でもスペシャリストを異動できないという事も多々あります。さらに、新しい事は必然的に試す期間が必要とされ長期的に続かないということも加味して考える為、正社員等ではなくここははやり派遣という雇用形態に頼らざるを得ないという一つの事実があります。
こういった背景から、派遣という雇用形態だけが専門性を求められるのでしょうか?新入社員として正社員で入社した会社でしか汎用的な仕事の経験は積めないのでしょうか?そもそも正社員であれば将来安泰なのでしょうか?否、時代は変わっています。
法改正がもたらす変化
2014年3月11日に派遣法改正案が閣議決定され、国会にて審議中であるものの、このままいけば施行予定は2015年10月になります。これがもたらす意味・インパクトは全ての労働者に関わってくると思います。派遣社員と正社員それぞれの状況変化について考えてみましょう。派遣社員の場合
無期限派遣が可能であったポジションも有期限派遣だったポジションも全て3年MAXに変わります。つまり法改正後、派遣で働く場合、最長3年しか同じ会社の同じポジションで働く事ができません。さらに業務範囲の撤廃により、これまで特定のコア仕事しかできなかったポジションが、コア業務以外の業務もできるようになる為、実質他の社員と同様に広範囲に仕事ができるようになります。大多数の企業ではアドミ業務と呼ばれるいわゆる諸雑務を派遣法上の専門性の観点から社員が行っていましたが、これからは全て派遣社員の方に任せるということが考えられます。
派遣ポジションにおける専門性を活かした仕事についてはもちろん残ると思いますが、これからはアドミ業務をしっかり任せられる人材を探す傾向が強まると予想します。
つまり派遣ポジションはより汎用的になり、未経験者でもチャレンジしやすい環境になるかもしれません。また英語を必要とする会社も増えてきている為、英文事務等の入口としてハードルがさがる可能性はあると考えられます。
正社員の場合
上記の流れから今度は正社員ポジションは安泰という神話は崩れると思います。理由はアシスタント業務やアドミ業務を派遣ポジションへ移した場合、単純にそれまでやっていた仕事がなくなります。仕事がなくなれば、人件費としてコスト削減する為リストラも発生するかもしれません。つまり正社員はより専門性と会社への収益性を求められます。
一部では「派遣社員が正社員のポジションを奪う」という表現もありますが、どこの観点からの意見であるかを考慮しなければいけません。正社員の立場であれば「奪われた」になり、派遣社員の立場になれば「奪った」になるかもしれません。一方企業からの視点は「コスト管理」となるかもしれません。
時代とともに動き出す時
重要なのはその事実を受け止めてどう動くかではないでしょうか?派遣法反対デモに参加し意見を主張することもできます。うまく制度を利用して未経験から経験を積む事もできるかもしれません。正社員の方は自発的に専門性を追求するようなるかもしれませんし、企業もそういった教育制度を設けるかもしれません。時代や国の政策によって物事は良いか悪いかは別としてどうしても動いていきます。変化の激しい時代を生き抜く力は必要ですし、またそれをするためには「何か」を持っていなければなりません。時代を生き抜く力を身につける為にも今からでも遅くないので、今から動き出しましょう。